廃墟の美

 ハイライン(High Line)とは 廃線となった貨物鉄道軌道敷を利用して 整備された遊歩道。 日本で言えば、市街地再開発事業によって 都市公園に再生した例である。
 マンハッタンのロウアー・ウェスト・サイドといわれる 旧工場・倉庫街の地区再開発事業として整備された。

 ハイライン鉄道は1934年に開業し、地域の発展に貢献した。
 1950年台になるとトラック輸送が 急速に普及し、貨物鉄道は衰退し始め、 1960年頃には営業区間の大半が廃線となり、 1991年に全区間が取り壊されたという。 その後、公園に転用する計画が進められ、
2006年に工事着手、
2009年に第1区間が、
2011年に第2区間が、
2014年に第3区間が公開され全線開通となった。
 私がここを訪れたのは2013年であったから、 当時は工事の最終盤だったことになる。

 私が歩いた区間がどのあたりか、記憶が定かではないが、 どこかのゲート階段から入り、南から北に向けておよそ1時間ほど散策した。
 旧工場・倉庫街の面影なのか、古い建物群と比較的新しいビルが混在し、 西側に目をやるとハドソン川が見えるなど、移ろう景色は新鮮な発見だった。

 歩道は枕木を転用したり、植栽も廃線後の自然な植生を活かすなど、 「廃墟」のムードを残しながら線路跡を歩きながら往時の活況を懐かしむような、 ノスタルジックムードに浸ることができる。

 日本では鉄道軌道敷の跡利用の例はあまり知られていない。 ハイラインの再開発が行なわれていたころ、 日本では旧国鉄民営化に伴い新橋汐留地区の操車場跡地が払い下げになり、 埋設文化財の発掘調査を経て、市街地再開発事業用地となった。

 その跡地は大手不動産会社が 再開発事業を主導して超高層ビルが 林立した。 東京湾岸エリアで急速に「新都心」開発が進んだ時期と一致する。
 汐留(シオサイト)にしても、お台場にしても、スケールが大きくダイナミックであるが、 身体のスケールとかけ離れていて、歩いてもあまり魅力を感じない。

2013年 9月

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